やまねこ通信278号
参院選後の「冬の時代」をどう生きるか?斎藤美奈子氏講演会
参院選後の「冬の時代」をどう生きるか?斎藤美奈子氏講演会
斎藤美奈子氏講演会のお知らせブログから一ヶ月以上がた
ちました。
参院選挙の前日、7月20日の茅野は晴天でした。
11時ころから、ちの男女共生ネットの頼もしいメンバーが
集まりました。
11時ころから、ちの男女共生ネットの頼もしいメンバーが
集まりました。
駐車場案内をアルバイト学生に依頼、会場設営、プロジェ
クター準備、講師控室、託児室準備、会場にテーブルを並
べて受付3列。別のテーブルではフィリッピン女性の人権を
守るブックロードのバッグを販売。
クター準備、講師控室、託児室準備、会場にテーブルを並
べて受付3列。別のテーブルではフィリッピン女性の人権を
守るブックロードのバッグを販売。
養護施設ひまわり作業所のクッキー、財布などの袋物がに
並ぶ。
今井書店のしほさんが著者サイン会の本をテーブルに並べ
ている。
時計の針が12時に近づく。新宿発あずさ号が到着する時刻
だ。たかこさんとちづこさんが車でお迎えに。まもなく到
着した講師はテーブルの位置、プロジェクターの写り具合
を確認して控え室に。
われわれスタッフは茅野名物、おいしい屋さんの有機野菜
料理の弁当を囲む。
するうちに参加者がちらほら。
運営委員が中心となり、準備会を重ねてかゆいところに手
の届く段取りが、しっかり組み立てられていた。
この過程を、やまねこは松葉杖の身体障害者として、すべ
て椅子に腰を下ろして眺めさせてもらった。
1時半、司会の声が響く。会場にはいつの間にか60人を超
える参加者が。知り合いも多いけれど、初対面の方々も多
い。
●やまねこの仲間ちの男女共生ネットが、文芸評論家斎藤
美奈子さんをお迎えして講演会を開く。
斎藤美奈子は、ジェンダーの切り口から権力者のウソを鋭
くえぐり出すことにおいて、ピカ一の論客である。女たち
の生き方が日本近代文学にどのように描かれているかを分
析し、目からウロコ、抱腹絶倒の書物をこれまでに多数出
版している。
ジェンダーの視点で社会を眺め、分析したら、どれほど面
白い光景が展開するだろう!
このことの実践者として最も先鋭で刺激的、イキの良い論
者として、やまねこの念頭にあったのが、斎藤美奈子さん
であった。
ここに至るまでに、昨年来の前段階があった。『モダンガ
ール論』文春文庫のあとがきに、著者の恩師成城大学経済
学部の教授が解説を書いていた。
経済学部の学生だった斎藤美奈子は、丸岡秀子の『日本農
村婦人問題』を読むことで、日本近代経済史、日本近代史
研究の海に漕ぎ出した。
ちの男女共生ネットは、丸岡秀子をロールモデルに選んで
いる。丸岡秀子は茅野から蓼科山を越えたところにある佐
久地方臼田の生まれ育ちである。
やまねこはこれを奇貨とし、ちの男女共生ネットの活動を
紹介しかたがた、斎藤美奈子氏に講演依頼の手紙を書いた。
斎藤氏はわれわれの活動に関心を示して、市場価格のン分
の1の謝礼で、講演を引き受けてくださった。
最初の依頼から約一年後に、この日の講演会が実現したの
だった。
●参院選の前日。ホットな話題が目白押し。
日本はこれからどうなるの!
~改憲時代の政治と女性~
次に、当日のレジュメをもとに、三つのテーマをやまねこ
流に簡潔に紹介します。
●[テーマ1] 学校とスポーツ界の「体罰」問題
学校の体罰に関する全国調査によると、体罰に対する考
えは男女で大きく違う。
全体では「暴力は一切認めるべきでない」が53%、「一
定の範囲で認めてもよい」42%である。
ところが、体罰を「認めるべきでない」「体罰を認めても
よい」の考えでは、
男性:43%、54%に対し、女性:62%、32%。
男性の半数以上は体罰容認派だが、女性の容認派は反対
派の半数である。
軍隊式の教育が戦後、学校に持ち帰られたこと、支配・被
支配の関係が身についている。日本は暴力に甘い国などが
体罰容認の背景をなしている。
暴力を禁止した法律、児童虐待防止法、DV防止法などがす
でに存在することを踏まえ、戦後日本が放置してきた体罰
について考える切っ掛けにしよう。
●[テーマ2]橋下徹「慰安婦は必要」発言をめぐっての橋
下発言の骨子は、1 軍の強制はなかった。 2慰安婦は
必要だった。 3 風俗業を活用せよの3点である。
問題点は次のとおりである。
1人権意識の欠如、2女性蔑視、3男性蔑視、4歴史認識
の欠落 5韓国への冒涜 6沖縄への冒涜
日本政府はすでに1993年河野談話(宮沢内閣)で「お詫び
と反省の気持ち」を言明し、1995年村山談話は「植民地支
配と侵略によってアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を
与えた。
この歴史的事実を謙虚に受け止め、「反省とお詫びの気持
ちを表明」している。
ところが「強制はなかった派」の主張が、強制したのは軍
ではなく業者である、慰安婦は「商行為」だったとかたり、
追随する者たちがいる。
背景にあるのは、買売春に対する日本と国際常識のズレで
あり、買春に甘い風土が日本にある。80年代には買春ツ
アーが堂々と行われ、国連人権センターから「何とかしろ」
と批判をうけている。
日本社会はこのようにして、買春に甘い風土なのである。
●[テーマ3] 安倍政権の「女性政策」を考える
安倍政権の政策
アベノミクス:再配分より経済成長
原発の再稼働:「原発ゼロ」はリセット
TPP交渉参加:1次産業と医療が崩壊
改憲への道:国のかたちが変わる
主な女性政策
育児休暇3年制度:これは安倍首相のこだわりで、むしろ
職場復帰を妨げる
成長戦略は女性:キャリア女性しか念頭にない
「女性手帳」で少子化解消:性教育をやればいいのに、
安倍氏はむしろ性教育をつぶす役割を果たしてきた。
ジェンダー平等政策が政策に取り込まれている度合いは、
社民党52点満点、共産党50点、民主党44点、公明党38点、
自民党11点、維新の会9点であった。
●以上の、予定されたテーマが終わると、斎藤美奈子さ
んは、憲法について情熱的に語り始めた。
自民党改憲草案のポイントは、
1 国民主権が危ない
2 基本的人権が危ない
3 平和主義が危ない
条文を踏まえながらの自民党の改憲案に対する根本的批
判をする。
●翌日にせまった参院選の結果は、斎藤さんが予測した
通りであった。東京地方区で山本太郎が当選したのはよ
かったが。
斎藤氏は次の衆院選までの4年間を、「冬の時代」と呼ん
だ。
すでに「改憲時代」である。
自民党の改憲案では、国防軍は三権分立の外にたつ第4
の権力となってしまう。
現在の最大の問題は、憲法を、私たち国民がろくに読ん
でいないことである。
その時代を、わたしたちはどうやって過ごしたらいいの
だろう?
1
日常生活で憲法のことを話題にする。周囲の人が乗っ
てこなくてもいい。飽きないで語り続けよう。
2
議員、自治体に対して、様々な問題で圧力をかけよう。
3
活動においては100%を求めない。
4
暗くならないようにしよう。
●選挙結果は、斎藤さんの予測通りであった。
「改憲時代」。
これからの4年をどうしたらいいだろう?
会場からの質問に答えて、身の回りの無関心な男性たちを、
どうやって切り崩したらいいかのアイディアを、彼女は伝
えた。あいうえおの5項目である。
あ:「あれ~」と声をあげて、「あきれるてみせる」。
い:「怒る」ふりをする。
う:「う~ん」と「うなり」、声にならない叫びを発する。
え:「えっ!」と聞き返す。
お:「オウム返し」に相手の言葉を繰り返す。
そのとおり。
黙っていてはいけない。
かといって、議論してもなかなか相手に通じない。
だから、「あんたの言い分は、呑めないよ!」
「それって、おかしいよ!」
と常に伝えてゆく必要がある。
その技法が「あいうえお」なのだ。
以上、斎藤美奈子氏の講演を、レジュメを参考にして、や
まねこ風に紹介しました。
シリアスな問題が山積みで、重くなりがちな講演にもかか
わらず、美奈子節の炸裂に応え、会場は時に、抱腹絶倒の
笑いが渦巻いて、「美奈子ちゃ~ん」との掛け声も投げら
れました。
サイン会も盛況、ブックロードのバッグも大いに売れて、
新規の会員もあり、ちの男女共生ネットのメンバーは、わ
くわく、ほくほくの一日だったのです。
講演の斎藤美奈子さん、新しい参加者のみなさん、リピー
ターのみなさん、チケット販売会場設営などのすべてを担
当した拡大運営委員のみなさん、本当にありがとうござい
ました。
長い夏休み中の、
うらおもて・やまねこでした。