ページビューの合計

2015年4月19日日曜日

やまねこ通信314号:「物語」とは何か?人はどうして「物語」を求めるのだろう?

@@@やまねこ通信314号@@@

「物語」とは何か?人はどうして「物語」を求めるのだろ
う?

日曜日は、新聞の書評欄にかじりつく。あまり印象に残ら
ない本ばかりの週もある。けれど今日の毎日新聞は、あれ
もこれも興味深い本の満載である。

それだけではない。村上春樹へのインタビュー記事が出て
いる。題して、「村上春樹さん、時代と歴史と物語を語る」
村上春樹の良い読者とは言えないはずのやまねこは、最近
の発言に対して、びっくりするほど共感を抱くようにな
た。

前回のやまねこ通信で、物語が何の役に立つのかについて
書く事を約束しました。それからひと月がたち、棲家のあ
たりの景観も季節も様変わりしています。

●やまねこの授業「物語の力I,II」が今年も始まりました。
明日は第2回目。

最初の授業で配布したプリントを掲載することで、以前の
約束を果たすことにします。

●「物語」とは何か?人はどうして「物語」を求めるのだ
ろう?

「心理学的、対人関係的、コミュニケーション的」アプロ
ーチでの「物語」
1 大学に入学し、大勢の新しい人々と出会います。その
中でどうやって友人を選んでゆくでしょう?
私たちは、まず、「自分の出た高校、クラブ活動、仲間の
こと。家族のこと、どこで生まれたのか、家族はいまどこ
にいるのか。自分の楽しみは、こんなこと、大学に入って、
将来はこうしたい・・・」などを人々に語ります。

 それを聞いた相手は、「こっちは、こんな高校で、こん
な活動をした。ホントは、どこそこの大学、学科を希望し
たけど、こちらに受かった。家族は目下、親が別居して祖
母の家に・・・」などと語るかもしれない。

 こうした自分の紹介が「物語」です。「私ってこんな感
じ!」「あなたってどんな人なの?」このことを私たちは
絶えず語り合い、交換しあうのです。私たちは自分の「物
語」を相手に伝え、相手の「物語」を受け止めます。
 これがコミュニケーションの成功例です。

2 もしも、こうした自分の「物語」を語らない人がいた
らどうなるだろう?あるいはあなたが「自分の物語」を言
いたくないと思う時って、どんな時だろう? Q1:
 
相手が語るまで、「彼の、彼女の物語は、きっとこんなで
ないのかな?」と私たちはその人の物語を「想像」するか
もしれません。けれどもしかすると、「そんな人がいたか
な?」と、印象が残らないかもしれない。印象の強くない
人のことは忘れてしまうかもしれない。

逆に、自分の物語ばかり語って、「こちらの物語」に耳
を傾けることもしない人がいるかもしれない。
Q 2:それはどんな人だろう?どんな場合だろう?

3 結論:「物語」には始まりがあり、いい時もあればわ
るい時もある。私たちが生きてゆく中で、失敗、事故など
の痛い目に遭い、苦難に落ちたとき、目先の苦しいことば
かりに気持ちが向かってしまいがちである。

そんなとき、「他者の物語」に耳を傾けるといい。様々
生涯、恐ろしい不幸、羨ましいような幸運、かと思うとど
ん底に落ちた話。このような物語に耳を傾けると「自分の
物語」が全体として見えてくるようになるかもしれない。

「今は、どん底だ。けれど、もっといい時だってあったよ。
いろんな段階があるのだな。もう少しがんばってみようか。
きっと良くなるよ」こんなふうに思える時が来るかもしれ
ない。
「物語」によって考えるとき、人はより大きな全体を眺め
るようになる。これは「自己の相対化」につながってゆく。

●ビジネス、モノづくりにおける物語
大学に入学し、学科の授業をうけると、さまざまな場面で
の「物語」に出会うだろう。
新しい商品を開発した。商品をどうやって顧客の手に届け
たらいいのか。効率的により多くの商品が届けられ販売が
成立し利益が増大するといい。他の企業が似通った商品を
作っている。自社の商品をより高い競争力の商品に改良し
新商品につなげたい。そのため顧客からのフィードバック
を得て製造に反映するといいだろう。このような見取り図、
ロードマップ、構想、シナリオを「物語」と呼び、システ
ム構築をする。このように一個の商品を「物語」の中に置
くことで、商品開発・販売の、過去、現在、未来を、一望
の下により大きな視野で見渡すことができる。

●文学、芸術における物語
小説や詩などの文学、映画、演劇、テレビドラマなどで、
私たちは「物語」に触れる。物語が始まると、先はどうな
るのだろうと気になって仕方がない。もっともっと先を見
たくなる、知りたくなる。これが「物語」の渇望である。
今期の「物語の力I」では、主に文学、演劇、映画における
物語を見たり読んだりしてゆく。
このことを通じて「物語の理解の仕方」を学ぶことにしよう。

●メディアから得られる社会の物語
私たちは「物語」に飢えている。メディアで事件が報じら
る。「誰が、誰を、なぜ、どうやって、どこで**したのか
?」この「物語」が展開することを切望し、人々はテレビに
ネットにかじりつく。

犯罪報道は「加害者とその動機」が判明するまで長い時間を
費やす。けれど一旦「ナゾ」が解けると急速に忘れられる。
物語は消費されるのだ。次の新しい物語は何か?芸能人の話
題、スポーツの試合も同じだ。錦織が勝ったの、負けたの?
これも「物語」である。

●「物語の力I,II」の学習目的は何か?
◎ 私たちは、どうやって生きてゆくといいのか?
◎ 私たちの生きる社会、世界の物語はどうなっているのか?
 どのようにあったらいいのか?
この二つをともに考えることが科目の目的である。

このため、映像、活字、新聞を見たり読んだりし、それらを」
分析して自分の理解を高めること。
さらにその射程と限界を見定めて批判すること。
文学、芸術ばかりでなく、自身の生きる世界を理解し、批判
する「主体」、「考える主体」を育ててゆくこと。これが目
的である。

質問:赤い罫線の出席カードリポート用紙に名前を書いて質
問の回答を書いてください。

1 Q1、 Q2
2 今日の授業で、interestingだったことを書いてくだい。
3 鎌田實さんの新聞記事「新聞が人生のヒントくれた」を
  読んで、どう思いましたか?
4 今日の私たちの生きる社会で、最も重要な課題は何で
しょう。
5 現在、自分の最大の課題は何ですか?

▲新聞を読み、関心ある記事を切り抜こう。「物語の力I」で
 使うので授業に持ってくること。


 以上、授業のプリントをほぼそのまま掲載しました。

▲「物語」とは、活字、映像ばかりだと思っていた。自分の自己
紹介が物語とは思わなかった。物語が大きな視野で捉えられ、
語に親しみがわいた。
このような回答が学生から寄せられています。



うらおもて・やまねこでした。