@@@@やまねこ通信186号@@@@
映画『あしたが消える』(原発を考える映画人の会・
カラー55分)は、1986年8月チェルノブイリ原発事故の
3年後に作られた記録映画である。
当時、全世界が原発事故に対する恐怖を抱いていた。
一方でこの国は、バブル経済のはじける2年前だった。
一方でこの国は、バブル経済のはじける2年前だった。
●1989年、「豊かな国の日本、平和で豊かな暮しをして
いるかに見える」とのナレーション。
いるかに見える」とのナレーション。
ところが原発の建設が進み、高速道路には核燃料が輸送
されている。原発内では作業員が常時被曝していた。
この映画を見た広瀬隆は嘆く。
「どうして、日本は、22年前のこの時に、“原発問題”
を、解決しておかなかったのだろうか」
今、この映画に描かれた原発作業員と同じ条件の汚染地
今、この映画に描かれた原発作業員と同じ条件の汚染地
帯に、福島の子どもたちが暮らしていることを、私たち
は忘れるわけにゆかない。
この映画を見ると、福島の子どもたちが、どんな過酷な
この映画を見ると、福島の子どもたちが、どんな過酷な
状況下に住んでいるかが分かります。
渚で遊ぶ母と二人の子供たちの光景。
1964年の映画『渚にて』を思い浮かべないわけにはいか
ないだろう。第3次世界大戦の原水爆による戦闘のため、
地球上の北半分は絶滅し、死の灰は南半球にも迫ってい
たとの設定のSF映画。
http://movie.goo.ne.jp/movies/p6581/comment.html
●原発技術者の父が52歳で亡くなった。その死を、受け
容れがたく思った娘は新聞に投稿した。葛西真紀子さん
26歳二児の母。
朝日新聞への投稿が掲載された。
「父は、日本の原発は二重三重の安全装置があるから絶
対安全だと言っていた。父の言葉に、私は、原発は絶対
安全なものだと信じてきました。その父は、骨癌で入院
して、四ヶ月であっという間に亡くなった。今、原発は
安全、を信じようとする従業員の信頼に本当にこたえて
いるのでしょうか」。
父は入院後まもなく下半身麻痺。真紀子さんは原発と関
係ないのだろうかと考える。国内にある38基の原発。父
は第1号から20年間すべての建設と保全にかかわってきた。
投稿が掲載されてから何通もの手紙が来た。その中に、
「原発に反対するのは、父を否定するようで苦しい」と
の真紀子さんの考えに対し、「むしろ、父上の死を無駄
にしないことになるのではないか?」との手紙が来た。
この考えに導かれ、市民グループに参加し真紀子さんの
勉強が始まった。
「父の死んだ原因を知りたい」。チェルノブイリ事故の
ようなことは日本にもあるかもしれない。
父は語っていた。「危ないと言われても、原発は必要だ。
最先端の技術だ」と。
●1979年3月米国スリーマイル島事故。炉心のメルトダウ
ン。燃料は容器内に止まった。
今でも動植物の奇形が相次ぐ。大きなタンポポが咲く。
●1986年8月チェルノブイリ原発事故。広島型原爆の500
倍の放出。10か月火災。記録映画を撮った監督は死去。
30キロ圏内永久居住禁止区域。
ヨーロッパに深刻な影響。ラップランドに死の灰。トナカ
イ廃棄処分。
●1988年、福島4号炉の欠陥を、製造にあたった田中三彦
氏が告発する。10年前より欠陥があったが隠されていた。
円形の原子炉を製造中に楕円形に押しつぶされた。そこで
ジャッキで整形。200トンのジャッキを円筒内に数本いれ、
高熱にして形を調えた。ジャッキの当たった部分が後遺症
になって残る。老朽化すればそこから故障が起こりうる。
89年1月、第二原発3号炉、圧力ポンプ内に金属片が落ちる。
電力会社は二重三重の安全装置と言うが、機械は必ず壊れ
るもの。ところが、危険を示すアラームが無視されている。
このことが問題だ。
原発を作るにはどのメーカーも2~3年5~6年かかる。必ず
知られたくない問題が起こっている。
葛西さんの父は語っていた。「危ないから二重三重に安全
対策をしている。だから絶対安全だよ」。
この言葉に「私も裏切られた。父も裏切られた」と真紀子
さん。
●チェルノブイリ事故を片付ける作業員の姿が映し出され
る。この事故はどうやって、収束したのだろう?
1に愛国心、2に放射能に無知な人々が活動したのだった。
日本に同じことが起こったら、どちらも期待できない。誰
が止めに入るだろうか。
――この懸念は実現している。「冷温停止」宣言の後に、
2号機が原因不明の高熱(70℃)を計測した。けれど誰もそ
こを調査することは出来ない。
さらに放射能の危険に無知を「装った」政府が、危険がない
かのように振る舞っている。
●原発労働者は被曝の不安があり、放射線手帳を所持して
いる。一般人の50倍の放射性濃度を受けることを余儀なく
されている。本当なら、アラームメーターを携行しなくて
はならない。しかし3時間でメーターがパンクする。
燃料棒の交換が最もつらい仕事だ。温度が高い原子炉の中
でマスクをかぶるから体中から汗が噴き出してどろどろに
なる。労働者たちはアラームを持たずに入る。被曝しすぎ
ると働けなくなるからだ。
それだけではない。この労働者たちは、被曝しても補償さ
れることがない。
広島長崎の被爆者を調査研究した村田三郎医師は、原発労
働者も同じ症状を示していると語っている。
8年前の原発労働者の実態調査101名中、8年間で死亡者10名
にのぼぼり、労働者のプライヴァシーを保つため、追跡調
査は困難である。
村田三郎医師は、真紀子さんに語る。
父上が入院したときのがんの始まりが、どこかは分からない。
「腎臓かもしれない。手術しても手遅れ。炉心に近いとこ
ろで働いていた。被曝によって起こった可能性が大きい」。
●青森県三沢基地に近い青森県六ケ所村には、核燃料リサイ
クル施設がある。射爆場が付近にあり、活断層もある。
クル施設がある。射爆場が付近にあり、活断層もある。
乳牛農家の人々が立ち上がった。事故が起きたら「六ヶ所」
ではなく日本の問題になるのだ。
――この言葉も実現した。
事故が起こったら、「福島」ではなく、日本中が問題に
なったのだ。
フランスのラ・アーグ、イギリスのセラフィールド。
日本からも再処理に送っていた。貯蔵プールで冷却し続ける。
ウランからプルトニウムを分断。再処理後の高レベル理論的
には廃棄物をガラス化する。その後何万年、何10万年の間、
管理し続ける必要。
セラフィールドでは250キロ、羊の汚染、子どもの白血病が
平均の10倍。
真紀子さんの父は語った――「今の生活を維持したいのなら
危険でも原発しかない」。
真紀子さんは思う。「捨てても暮らしてゆける、クーラー付
けてテレビ見て、自分が楽しい思いをしたら人が死ぬ。自分
の快適さのゆえに死ぬ人がいることを考えよう」。
世界は原発、廃止の方向に向かっている。ところが一方、日
本は13基が建設中。
果たして原発が、真の豊かさと幸福につながるのか?
●実現してしまった23年前の予言、映画『あしたが消える』。
チェルノブイリの放射性物質が流れる図と、福島で原発事故
が起きた場合の汚染予測の地図。
重ねられた2枚の地図を見るだけで、この映画を見る価値は十
分にあります。
●上映日時、3月10日 1回目午前 10時~12時
2回目午後13時~15時
会場:茅野市家庭教育センター 2階
入場券:1000円販売中
小学生無料
中校大の児童生徒学生および障害者、500円
中校大の児童生徒学生および障害者、500円
託児所あります。
主催:映画「あしたが消える」上映とお話の会
今井書店、平安堂書店でも販売中。早めにお申し込みください。
うらおもて・やまねこでした。