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2011年4月29日金曜日

クレーン車事故の加害青年の働く「権利」

@@@やまねこ通信72@@@   
            
被災地で多数の人命が失われ、その後の暮らしに明るい方向が見えない中、栃木県鹿沼市で、
18日朝、通学途上の児童の列に、クレーン車が突入。
9歳から11歳の小学生6人が死亡するという痛ましい事故が起きた。

 やまねこはこの事件を、若者の就労の権利の視角から考えてみたい
 
 柴田将人容疑者26歳。
 運転手はハンドルにうつ伏して居眠りしていたように見えたとの目撃者の証言。
 「人をはねたかどうか、覚えていない」
 と事故直後の加害者。
 
 持病の有無が疑われる状況であった。
 てんかんだった。
 栃木県や県外で、複数の病院に通っていた。
 当日は薬の服用を忘れていた。
 
 3年前、小学校5年の男児に右足複雑骨折の重傷を負わせ、有罪判決を受け、
 現在、執行猶予中だった。
 この時は、「前夜遅くまで遊んでつい、居眠りした」と、謝罪していた。
 http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20110419/500367


 いったい、クレーン免許を取得する際に、病気は妨げにはならなかったのだろうか

 てんかんを診療する医師によれば、医師の診断書によって免許が取得できるという。

 「てんかんを有していても2年以上発作がない場合、あるいは意識を消失しない発作、
  夜間に限られる発作の場合、専用の診断書による審査を経た上で運転が許可される
  場合がある」。http://www.ne.jp/asahi/home-office/nak/ept/ept_index.html

 
 ともかく、柴田容疑者はてんかんの持病があり、病院に通っていたが、
 仕事への意欲があり、クレーン免許を取得した。
 
 仕事が欲しい。
 伝えたがために、不採用になるとまずい。
 だから就職面接では持病のことは言わなかった。
 持病があったとしても、働く権利はある。

 現在のクレーン会社に採用されたときは、会社に病気のことは伝えなかった。
 この時、本人は、まさか今回のような事故を引き起こすとは思っていない。
  
 「持病、話せなかった」と容疑者の母が会社に出した手紙が公表された。
 「持病などを隠した結果、迷惑をかけた」と母親は謝罪しつつも、
 「持病や執行猶予中であることを(親子で)隠した。
 心苦しかったが、息子が喜んで働いている姿に本当のことを話せなかった」と告白。

 事故の後、自分が経営する店を閉めることになった。
 「一生かけて償う。許してください」と母は結んでいる。
 
 父のことは伝えられていない。
 容疑者の母は、持病を隠して、仕事について喜んで働く子どもを守った。
 「喜んで働く子ども」を見守った母の気持ちはいたいほどよくわかる。
 病院通いだけで年を重ね、職業が見つからない人々の多い中で、柴田容疑者は
 職業に挑戦していた。
 この背景には、診断書を書い後押ししてくれた医師が介在しているはずだ。

 てんかんの薬は、抑うつの副作用があると聞いている。
 服用しない方が、気持ちがすっきるするかもしれない。
 
 しかしクレーン車のような重量級の車両を運転し、人々の交通頻繁な街を
 走行することは、一歩誤れば、人命にかかわる。
 こうした自覚が少しでもなかったのだろうか。
 薬を処方している医師は、クレーン車の仕事に勤務していることを知って、
 容疑者にどんな忠告をしていたのだろう。
 容疑者を見守った母にしても同じことがいえる。
 3年前の事故のことを、母も子も忘れていたのだろうか。
 
 容疑者と母の二人にとり、今回の事故は「想定外」であったことだろう。
 だが、犠牲があまりに大きかった。

 「喜んで働く子ども」とそれを見守った母は、
 「喜んで登校する6人の子どもたち」を、母たちから奪いさってしまった。

 奪われたのは、6人の小学生の生命と、その生きる「権利」ばかりではない。
 てんかんの持病を抱え、偏見に悩みながらも、薬の服用を忘れず、
 細心に配慮しながら社会で働く人々の権利も、今回の大事故のために、
 危うい事態にさらされている。

 柴田容疑者の働く権利は、同じ立場にある多数の人々の権利を危機にさらしたのである。

 うらおもて・やまねこでした。


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