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2011年6月25日土曜日

木曽からの風、「小さな勉強会」の広がり

@@@@やまねこ通信102@@@@

「木曽路はすべて山の中である」。
『夜明け前』の藤村の書き出しを口ずさむMかずこさん。

奈良井宿、三岳、常勝寺(じょうしょうじ)、桃介貞奴記念館、妻
籠(つまご)、馬籠(まごめ)、中津川。
信州に足を踏み入れて21年目、初めての木曽への旅だった。

木曽には幾度もの旅をしたかずこさんの、一日で木曽を眺めわたそ
うとの行程表に、三岳を加えてもらって飛び乗ったやまねこ。
この一週間木曽への風、木曽からの風が同時に吹いたのだ。
これは時だぞ!

雨模様のウイークデイ、23日木曜日朝8時に諏訪インターに入る。
あっという間の伊那インターで下道へ。奈良井の宿場は行きかう人
もまばら。時折しとしと降る雨の中、狭い道の両側に並ぶ二階家の
宿屋の街筋を歩く。

江戸日本橋から京三条大橋に至る近世の二道。一方は海側の東海道、
山中のもう一方の主要道だった中山道69のうち、奈良井宿は34
目。「奈良井千軒」と呼び習わされる賑わいの町だった。

今は塩尻市。こんなに近いところに!やまねこ恥ずかしながら今度
初めて知ってびっくり。
漆器の食器を並べた店が目につく。独特の楕円型の弁当、漆塗りの
お猪口など。この先、ゆっくり歩いて好みの器を見つけよう。

二つ目の目的地は木曽市三岳。
東電福島原発事故以後、何とかしなくてはと「小さな勉強会」を開
いたグループのことが信毎新聞に写真入りで掲載された。やまねこ
はその日のうちに新聞に出ていた鈴木真美さんに電話をした。

子どもを育てているお母さんたち4人がグループを作って、DVDを見
て放射性物質の害を学ぶ勉強会を呼び掛けている。住民の数の少な
い地域なのに16人の参集があった。

三岳の鈴木さんのお宅を訪問した。このあたりはどの道も、山間の
谷間道。道路の下には谷川が流れている。住所を聞いただけではと
ても尋ね当てることは出来ないだろう。
「木曽路はすべて山の中である」ことをあらためて実感。

鈴木さんらの活動には前史があった。4年前の07年、NTTドコモ
の携帯基地局の鉄塔が小学校、中学校、保育園から100150メート
ルの場所に建設されたことに疑問をいだいた。電磁波は健康に悪影
響があるのではないか?知人と一緒に町に鉄塔の移転を訴えたとこ
ろ、町長は「住民自治の原則に従い、ドコモと交渉する」と答え、
住民側で学習会を開くように提案した。

0712月三岳地区で学習会を開いたところ、50人以上の参加があっ
た。これを機に有志の学習会を始め、1500人以上の署名を集めてド
コモ側に移転を働き掛けることを求める要望書を町に提出。ドコモ
側は「町の都合であれば代替地に移転してもいい」との回答。町は
2キロ離れた代替の町有地を用意し09年に鉄塔は撤去された。

このころ、3人で始めた活動に10人が仲間として加わった。
2年前の094月、木曽町町議会に「携帯電話などの基地局設置の際
に、周辺住民への説明会の開催を義務づけたり、町が情報を集めて
状況把握する条例を制定してほしいとの陳情を出したところ、その
趣旨が採択された。

多数の署名を集め、説明会で議論をするうち鈴木さんは「これって
『自治』なのでは」と気づいた。以上は信濃毎日新聞09412
の特集記事から得られた経緯である。

原発事故以後の「小さな勉強会」は、この時のグループが立ちあげ
た。子育て中の若い母親たちの草の根運動。この運動がもっとも意
識が高く、強くて長続きすることは、戦後の歴史を紐解くと分ると
やまねこは確信している。鈴木さんは予想通り、健康で躍動感あふ
れる女性だった。

昨日訪れた松本市Wingでも若い母親たちのグループの動きがあると
聞いた。原発事故、避難場所の問題、放射性物質の数値。政府の
「大本営発表」を黙って聞いているわけにはいかない。子どもたち
の命、子どもたちの将来は自分たちの手で何とかしなくては。母親
たちのこうした声が高まっている。

同じ考えのグループが全国に幾つも誕生しつつあるだろう。木曽町
三岳の鈴木真美さんたちのグループが、どんどん仲間を増やすとい
い。やまねこも身近な人々に呼び掛けようと思っている。

下諏訪で611日、「原子力発電を考え直そう」との集会が開かれた
ことはすでに「やまねこ通信」でお伝えした。
その折、こんな意見が語られた。

チェルノブイリの事故の後、子育て中の女性たちが最も敏感に反応
して活動を開始した。
それに引き換え、勤労者である男性たちは、にべもなかった。脱原
発運動をする人々特に男性にに対しては、「あんた、どうしたの?」
といわんばかり憐れむよう眼が向けられた。

このことはやまねこも経験している。企業、役所、学校に勤務して
守られている男性たちは、国の政策に対して疑問を抱きはしなかっ
た。企業戦士たちは国をまるごと信頼するかの姿勢をとっていた。
組合員であれば、組合の方針に耳を傾けても、それ以外の運動は「
子どものお遊び」として馬鹿にしていた。自分たちこそが「社会」
「国」「世界」を担っているとの自負に凝り固まり、慣例の定まっ
た軌道を進むだけの自動人形と化していた。

現在、このように終身雇用で守られた勤労者は、いったいどこにい
るのだろう。就職難、非正規雇用の若者たちは何を考えているだろ
う。300万円の年収が結婚可能なボーダーラインとの声も聞こえて
いる。

非正規雇用、派遣雇用の者たちは、「国」に守られてはいない。
もはや特権を持たぬ退職後の高齢者も同じだ。女であれ男であれ、
政府の「大本営発表」を黙って聞いているわけにはいかない。一昔
前の男たちのように、草の根の女たちの活動に、冷やかな眼を向け
ている余裕などないのだ。

男たち特に若者たちは、ようやく女たちに追いついた。女たちが子
育てしながら、あるいは非正規雇用の中で、社会の行く末に対し、
政権の座にある権力者に対し、疑問を抱いたと同じ立場に、男たち
はようやく到達したのだ。

東電福島原発事故が、この国のこうした人々に、「自治の意識」や
草の根運動の意味を気づかせる千載一遇の機会になるといい。とて
もこのままでは済まされないのだから。

「木曽からの風」はやまねこにこのことを気づかせてくれた。

やまねこの付近にお住まいの皆さん、「小さな勉強会」を開きませ
んか。ご連絡をお願いします。

うらおもて・やまねこでした。


2 件のコメント:

  1. やまねこさん、有意義な勉強会だったようですねぇ

    馬籠、妻籠、息子たちを東京の専門学校にやって身軽になった頃
    オバちゃん3人で(その頃はまだやまんばでなかった)アタシの新車(ホンダの軽四、4輪駆動)で出かけたのを思いだしました
    男に限らず女も、企業と言う名の碁盤の上で、1ッの碁石となると、魂を抜かれたようなものではないでしょうか?

    勉強会の輪が大きくなると良いですね~

    お気に入りのお猪口は見つかりましたか^^?

    返信削除
  2. やまんばさん。今日は。
    コメントありがとう。
    「男に限らず女も、企業と言う名の碁盤の上で、1ッの碁石となると、魂を抜かれたようなものではないでしょうか?」

    そういうことなのか。
    魂を売り渡して生活の糧をもらう。碁石の一つ。何かを考える自由があることを忘れて初めて企業のお役に立つ碁石になる。

    馬籠、妻籠はまだおばちゃんだったやまんばさんのアルバムの一頁だったのですか。いずこも同じ後継者難が悩みの種のようです。

    機のお猪口で呑んでみたいものです。

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