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2014年5月8日木曜日

やまねこ通信299号:歌の他に抵抗のすべなし、オスプレイの飛来する「標的の村」

@@@やまねこ通信298号@@@

三上智恵監督のドキュメンタリー映画『標的の村』。
沖縄本島北部の東村・高江は、那覇から海路しかないヤンバルの奥
地だった。素晴らしい自然の真っ只中。約160人の人々が暮らす
山村。土地を開墾し耕して作物をつくり、畑で育てた野菜と美味し
いパンを出すカフェを営む一家が暮らしている。夫婦と子ども6人
の家族。4人の子どもが高江で生まれた。子どもたちは学校から帰
ると、付近の渓流に飛び込んでは泳ぎ、泥んこでそこらじゅうを遊
び場にし駆け回る。

一家の住宅の付近にヘリコプター離着陸地ヘリパッドを新設すると
の知らせが入る。すでにあるヘリパッドを更に増設。

何のために?
どんな機種が飛んでくるの?

高江の人々は生活がかかっている。説明を求める。
答える防衛省沖縄防衛施設局の担当者は「米軍の方針は関知できま
せん」の一点張り。

説明を求めて高江の住民は抗議行動をする。抗議行動の目的が問わ
れることなく、集会に加わった高江の人々は「通行妨害」の罪で国
に訴えられる。別件起訴である。

国の政策に抗議する住民を国が告訴し、弾圧・恫喝する「弱いもの
いじめ」裁判を米国ではSLAPP裁判と呼んでいる。strategic lawsuit
 against public participationの頭文字の略。

威圧訴訟、恫喝訴訟とも呼ばれている。英語のslapという動詞には、
「頬をひっぱたく」との意味がある。

高江の住民は、SLAPP裁判の被告になった。抗議行動の場に居合わせ
かった7歳の末娘の名まで被告に加えてあった。

驚くほどいい加減な検察である。出廷するには仕事を休み、片道3時
間かけて那覇市の裁判所に出向かねばならない。告訴された人々は1
0数人いた。地裁で「有罪」の判決が出たのは、2人のみ。次の判決
では1人に。抗議する住民をずたずたに切り離す国の分断工作が見え見
えである。

●こんな事態が進行していたなんて、「標的の村」を見るまで、やま
ねこは少しも知らなかった!

「高江にオスプレイが飛んでくるのではないか?新聞が報道している
ぞ!」
ようやく開かれた地域の説明会で住民が質問する。
出席した真部朗・防衛施設局長は、「今は分からない。わかり次第、
説明、お知らせします」と回答。

感情を込めず、仮面のように無表情な真部朗・沖縄防衛施設局長。
真部朗局長は、「不適切発言」の前任者が更迭されたため、以前のポ
ストに返り咲いたのだった。

「不適切発言」の折の報道をクリックしてください。

酒の場でのホンネ発言を新聞記者にリークされ県民の反感を掻き立て
た前任者。後任真部朗局長の職務上の<能力>は「仮面のような無表
情」に尽きるだろう。

上からの指令を繰り返すだけ。自発的発言ではないから責任はない。
真部朗局長の内面は、ハンナ・アーレントが分析するナチスの強制収
容所看守だったルドルフ・アイヒマンと同じだね、とやまねこは試写
会を見た仲間たちと確認し合った。(ハンナ・アーレントについては
後日また)。

真部朗が回答した説明会は開かれない。オスプレイ配備に対する抗議
行動が高まり、沖縄県知事が霞ヶ関に駆けつけ、防衛省森本大臣に厳
重な抗議を行った。この場面ばかりは、NHKテレビのニュースで放映さ
れたな、とやまねこは思い出す。

森本防衛大臣は、「オスプレイ配備は決まっていない。もしも決定す
れば、丁寧に説明する」と県知事に回答。

ところが高江の住民、沖縄県民の抗議にもかかわらず、オスプレイが
間もなく普天間に飛来した。10万人が結集した県民大会の直後、森
本防衛大臣が、直前になって知事に電話で通達。これが沖縄県民、高
江の住民に対する「丁寧に説明する」だった。

●オスプレイMV-22の沖縄配置は、実は1990年代から決定していた
のだ。沖縄県民に対し、早く説明するように、米国は日本政府に迫
っていた。実務を担当していた高見沢という官僚に責任があることが
語られている。

幾度も死亡事故を引き起こし欠陥機であることが明らかなオスプレイ。
高江の集落は、その練習場になる。初心者パイロットが欠陥機を上空
で乗り回すのである。

●なぜ、高江の集落を囲む形でヘリパッドを8基作るのか?
他に土地がないからではない。実戦訓練は人が暮らす集落を必要とす
る。ヘリの窓を開け、住民の顔が見える距離で、いつでも狙い撃ちで
きる態勢の訓練をする。これがオスプレイの実戦訓練、殺人訓練なの
だ。

1960年代、ベトナム戦争を想定した訓練場が沖縄に作られ、高江
の住民がベトナム人役を務めることが余儀なくされた。返還前の沖縄
で、そこにゆけばお金や食料がもらえた。
「ベトナム村」と呼ばれていた。

今、高江の人々の暮らしは、何も知らされぬまま、「ベトナム村」の
住民同様に、「標的の村」にされたのだ。

●2012年9月29日オスプレイ強行配備前夜、人々は米軍普天間
基地ゲート前に身を投げ出した。言葉で抗議してもダメ、一つしかな
い身体を道路に横たえ、無抵抗の抵抗をする。沖縄の伝統的な行動だ。

力強い歌声が響きわたる。普天間基地のゲートをふさぐ車の中でひと
り歌う女性。「安里屋ユンタ」。八重山に伝わる古くからの抵抗の歌
であるという。

動画をクリックしてください。

●身を投げ出すのは沖縄県民「うちなんちゅう」、無抵抗の人々を強
制的に「排除」し、カメラを持った新聞記者をも牛蒡抜きするのは沖
縄県警の警察官たち。

「アメリカでも、日本政府でもない、なんで、県民うちなんちゅう同
士がいがみあわねばならないのだ?」泣きじゃくり訴え掛ける女性。
「もう止めようって、(県警は)帰ればいいじゃないか!」呼びかけ
る男性。

同胞たちに食い合いを強いる巨大な責任者はここにはいない。
へらへら笑う海兵隊の米兵たち。米国の最下層の若者を集める海兵
隊。社会的弱者たちが権力に囲われ、さらに立場の弱いものたちに
歯を剥く。

ベトナム戦争も、朝鮮戦争も同胞が合い喰む構図は同じだった。

●「標的の村」監督の三上智恵氏はナレーションを担当しカメラを
担いで取材もしている。三上氏は成城大学で民俗学を学び、沖縄国
際大学大学院で沖縄の祭礼を研究した。

三上智恵監督の主張がびんびん伝わる。
舞踊や歌はただの娯楽ではない。
古代以来の「歌と舞踊の誕生」をこの映画はリアルに映し出す。
抵抗を禁じられた命懸けの抗議行動が、歌と舞踊を誕生させる場で
あることをこの映画は雄弁に物語る。

●ひとりでも多くの日本人にこの映画を見て欲しい。
静かに、声低く訴えよう。
「日本は安保体制下だから沖縄に基地があるのは当たり前」。
こう考える人こそ見て欲しい。

やまねこは、「標的の村」を見るまで、沖縄のことを何も知らなか
ったことを知った。
NHKテレビで上映されるといい!
試写会を見た人々は、誰しもこう語っている。
この国の最重要の課題なのだ。福島の原発事故と同様に。

●5月24日(土)茅野新星劇場で4回上映します。
上映開始時刻:
10:00、13:00、17:00、19:00
15:00から下嶋哲朗さんのトークがあります。

主催:「標的の村」上映会 in 茅野
チケット1000円を販売しています。今井書店、平安堂茅野店
やまねこにお問い合わせください。


●うらおもて・やまねこでした。


4 件のコメント:

  1. 標的の村のHP http://www.hyoteki.com/

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  2. 宮坂享さん、HPのURLをありがとうございます。

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  3. 少し前の沖縄のホットスポット、辺野古の闘いのDVDを見ていただきたく、郵送しました。ぜひご覧ください。

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  4. 宮坂亨さん
    DVDどうもありがとうございます。
    やまねこの棲家で仲間と上映会を開きます。

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