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2015年1月9日金曜日

やまねこ通信308号:ピケティが今夜Eテレに、パリが大変なことに

@@@やまねこ通信308号@@@
ピケティが今夜Eテレに、パリが大変なことに

一昨日のことである。
夜のニュースを見ていたらパリで新聞社が襲撃され死者1
0人との文字が画面に流れた。死者はやがて12人にふえ
た。

昨晩、テレビ朝日の「報道ステーション」で、詳しい報道
を見た。パリの風刺週刊新聞「シャルル・エブド」社の編
集会議の部屋に加害者が押しかけ、出席していた編集長は
じめコラムニストや漫画家に向かってカラシニコフ銃を乱
射した。事件後車で逃走する際、「神は偉大なり」と大き
な声で叫んだ。

加害者は車で逃走しさらに被害者を増やしているらしい。

同紙はこれまでイスラム教指導者を風刺した漫画を掲載。
犠牲になった「シャルリー・エブド」紙編集長シャルボニ
エ氏(42歳)ことシャルボーは宗教は哲学と同様に批評
の対象になりうるとの考えを述べていた。

フランスは武器輸出大国、原発大国として悪名高い国でも
あるけれど、移民を「フランス人」として受け入れる自由
な国でもあった。「自由・平等・博愛」に基づいた政策。
同国ではイスラム教徒が人口の1割約600万人を占めて
いるという。

事件以後、一般のイスラム教徒が報復の不安に落ち、フラ
ンス国内の右翼的勢力が影響力をますのではないか。

何より、これまでのフランスの「自由・平等」を建て前と
する歴史が終わるのではないか。それが世界的な「自由・
平等」の理念を破壊する方向に進むのではないかと心配だ。

●この事件の前、やまねこはフランス発の書物に関心を向
けていた。
その本は、経済学者トマ・ピケティ『21世紀の資本論』。
流行の真っ只中のため、書店でも図書館でも入手が難しい
と新聞に書かれているくらいだ。

竹信三恵子さんが書き下ろした『ピケティ入門』(金曜日、
1200円)を買い込んで読み進めるうち、ピケティの考
えは、「アベノミクス」を批判をするやまねこたちにとり、
大いにタメになることが分かってきた。

ピケティの「格差論」。安倍政権寄りの人々がきっと、歪
曲した読み方を流布させるだろう。それを防がねばならな
いと、女たち、働く人々の側からしっかり分かりやすい切
り口で書かれた不可欠の書、竹信三恵子の『入門』。
以下、竹信三恵子さんの『入門』を基にした紹介です。

●社会の階層差の拡大が避けがたい。階層差の生む格差を
解決するには、何らかの人為的な格差縮小政策が必要であ
るというのが、ピケティの主張である。

ピケティは1971年生まれ。両親はパリ五月革命以来、
左派の労働運動活動家。22歳で経済学博士を取得した秀
才。高い学識を、ピケティは、働く人々の立場から社会を
変えるために使おうとしている。政治的には、オランド大
統領の所属する社会党に近い立場。

●マルクスは19世紀において産業革命が進む中、労働者
の置かれた悲惨な生活を描き出した。資本による労働者に
対する搾取が進み、資本は際限なく集積してごく少数の者
の手に集まる。結果、資本主義自体が自壊するか、共産主
義革命が起こるしかない。これがマルクスの考えである。

けれど19世紀の最後、格差は広がったものの労働者の賃
金と購買力が上がった。テクノロジーの進歩と着実な生産
性の増大をマルクスは無視していたとピケティは見る。こ
のことを繰り返さぬために、歴史を通した長期的な視座、
数量的データの分析が必要だとピケティは考える。

けれどマルクスの考えた「資本の無限の集積の原理」は今
なお重要であり、80年代、90年代の欧米、日本の国民
所得に対する私的富の高まりはマルクスの論理を思い起こ
させるとも。

一方、米国の経済学者クズネッツは第二次大戦以後注目さ
れる。経済発展過程の初めの頃は格差は拡大するが、その
後、経済成長によって中間層が増え、格差は縮小をたどる
という説。

クズネッツの論は、所得の不平等は、経済政策にはかかわ
りなく、テクノロジーの発展と生産性の向上により自動的
に縮小してゆくというもの。

やまねこはこの説を、同世代の保守政党支持者から散々聴
かされた覚えがある。

●ピケティの理論はマルクスの「資本集積の原理」に対す
る洞察と、クズネッツの数量分析を取り入れ、そこに歴史
的視座を盛り込んで長期間の格差の動きを分析したもの。
すると例外的一時期を除くと、格差は一貫して拡大傾向を
たどっているとピケティは主張する。これが新しさである。

●「資本」は働かなくても収益があがり相続によって個人
の努力とは無関係に引き継がれるものである。
一方、人々の経済活動で稼ぎ出した年間所得の総額を「国
民所得」とする。

「資本」と、「国民所得」を比較すると、3:1、時には
7:1に達する。勤労で得られる「国民所得」よりも「資
本」が3倍、7倍になる社会。「資本」は世襲されるので
特定の人々の手にしか富がわたらず、富の偏りが進んでゆく。
2010年の日本は「資本」が6倍でありバブル期は7倍
だった。

成長率の低い社会では、生産によっての利益よりも、資本
の比重が大きくなり集中度を増す。少子化はこれに拍車を
かける。

●「業績至上主義」。1980年代以後に顕著な傾向は、
ある能力、スキルをもつ人々の報酬が高くなったこと。米
国では企業のトップ、著名な医者、研究者、エコノミスト
の高収入が当然とみなされる。「勝ち組」の登場である。

ここでは誰もが「勝ち組」になる可能性があると見えるだ
けに、「小株主」などが大株主を潤す資産の拡大を支持し
がちになり、格差縮小のための政治選択がむつかしくなる。

格差が進んで固定化されると、子どもたちの教育にも影響
が出る。ハーバード大学の学生の親の平均年収は、国全体
の上位2%の人々の年収と同じだという。

社会の支配層が高収入の人々ばかりになれば、中低所得層
の所得を上げる政策に政治家が積極的ではなくなる。低い
年収の階層に固定化されることに不満を抱く人々は、国内
政治に絶望し、排外主義、外国人労働者への敵対感情に向
かう。

●ピケティの最大の解決策は、「国際的富裕税」というア
イディアである。一国の中で富裕層の税率を高くすると、
富裕層は税金の安い国に逃れてゆく。この国の富裕層がシ
ンガポールに移住している話を聞く。

ピケティの考えは、国連のような機関で「国際的富裕税」
を徹底し、誰も逃れられなくすることである。これは同時
に、隠し資産を明るみにだし、社会の富を顕在化し配分を
平等にすることにつながるのだ。

義務教育が受けられない世界の途上国の子どもたちは、莫
大な隠し資産が解放することで、学校に行けるようになる
だろう。

「国際的富裕税」はとても不可能だと考える人々が多いだ
ろう。けれど、理論は発言されて始めて実現に向かう。最
初から大賛成を受けないから見込みがないと思うことはな
い。

●上に述べたピケティの分析は、まぎれもなくこの国に起
こっている現実である。「アベノミクス」はこの格差を一
層拡大する金持ち優遇政策である。

根本的に批判をするための理論がないものかと、やまねこ
は探しあぐねていた。ピケティの『21世紀の資本』は2
013年に出版され、英訳が14年春、邦訳はみすず書房
から14年12月に出た。
竹信三恵子『ピケティ入門』(金曜日、1200円)は1
4年12月20日出版である。

●やまねこは、ご近所の仲間、ちづこさん、たかこさん、
ちの男女共生ネットの仲間と共に、竹信三恵子『ピケティ
入門』の輪読会をすることにした。

ところが本を買おうとすると品切れである。みすず書房の
邦訳も同じである。辛抱強く待たねばならない。

●その矢先、たかこさんから朗報がもたらされた。
Eテレ「パリ白熱教室」がピケティ講義をするよ、との知
らせ。メールと電話で皆さんに連絡。

本日金曜日夜11時開始、全5回の連続講義とのこと。
見られないかもしれない皆さんに録画する約束も。

「アベノミクス」に対する怒りのため、眠れない皆さん、
どうか今夜のEテレ11時をご覧下さい。

このままではすまない!
どうにかしなくては!


うらおもて・やまねこでした。

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