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2017年5月1日月曜日

やまねこ通信380号:再発後の癌研有明病院で、「身体は自分のもの、そして死もまた」

@@@やまねこ通信380号@@@
再発後の癌研有明病院で、「身体は自分のもの、そして死もまた」

骨腫瘍の手術を4年前13年6月に受けてから、
有明病院に通うことになった。
初めは1ヶ月1度。次は2ヶ月1度と間隔を少
しづつ伸ばしながらの経過観察だった。

手術の際、腫瘍を取り除いて空洞になった骨の
中に人工骨がおさめられた。ブロック状、顆粒
状、さらに綿状の人工骨も加えられた。通院の
目的は、X線を照射して、人工骨が自然骨と一体
になる様子が順調に進んでいるか、再発がないか
を観察することだった。

こり:こんな感じで少しづつ間隔を伸ばして5ヶ
月1度で通っていたんだね。

▲手術から1年半後の14年10月だった。検査
を終え、呼び出しベルに従って診察室に入る。先
ほど撮影しばかりの映像の画面を、主治医のA先生
が食い入るように見つめている。
間もなくA先生は声をあげた。

「あ、再発してるわ!」
関西訛りの柔らかいアクセントが耳に刺さる。
「再手術ですね~!」

これまでずっと順調に人工骨と自骨の一体化が進ん
でいたと聞いていたのに、どうして再発なの?痛み
もないのに。やまねこは割り切れない思いがした。

けれど、MRIの映像が、骨の中のふわふわした雲のよ
うなに見える腫瘍の存在を映し出している。間違い
のない現実だ。かねてから再発の懸念はいくども聞
いている。

「何年かに一度手術をしてゆくことになると思いま
す。・・・女性の平均寿命から逆算すると、10回
ってことはないですよ。人工関節にすれば抑えられ
ると思いますけれど・・・」

主治医の頭にある基準がようやく飲み込めた。そう
なのだ。やまねこの70歳という年齢の女が先々何
年生きるを考え、そこで手術回数を計算している。
平均寿命88歳だったらこれから18年である。

こり:当たり前じゃん!

自分のことはそう思えないんだよ。こりちゃん!
また入院手術か!がっかりして、この日は言われるま
ま、手術前の検査の日程を決めた。

▲そうして2週間後、10月末に、骨シンチ、CTの検
査を受け、診察室に呼び出される。
すると驚くような展開になった。

こり:精密検査の結果、もっと重い症状が発見された
      の?

その反対だった。
A先生は語った。前回の再診時、やまねこの腫瘍再発が
発見された日から一週間ほどの間に、癌研有明病院の
腫瘍治療の方針が大きな転換を遂げた。

これまでは手術が最優先だった。
ところが、今後は薬物療法を最初に試し、患部を縮小さ
せ手術時期をコントロールするように変った。整形外科
全体の方針がこのように変化したというのだ。

やまねこの再手術は中止。これから薬物療法を開始する
ことになった。
「よかったあ!」
手術を前にした緊張がほどけた。大歓迎の結論である。

こり:それでどんな治療なの?

新しく使用認可された骨粗鬆症の薬Dを投与して経過観察
をする。再発した腫瘍がどれほど縮小するのか様子を見て、
手術の予定を立てる。A先生はあくまで、手術の時期をコ
ントロールするとの考えを強調していた。

この日から、薬物Dの筋肉注射が開始した。これから毎月
通院である。
通院の際に血液採取をし、腫瘍マーカーが上昇してないか
を毎回点検するのだ。

▲こうして15年6月に。
ここでやまねこはA先生にA4版一枚の手紙を書いた。

「主治医「(今後、手術を)10回もするわけではないか
ら・・・」
やまねこ「7~8回したケースがあるんですか?」
この先10数年、年中行事のように次の手術を待機して暮
らすのは、あまり楽しい将来ではありません。むしろ、薬
物だけで腫瘍の縮小、消滅を期待できないでしょうか。外
科医の先生にメスを持たないでよと依頼することは、恐縮
ではあるけれど、ここは自分の人生を優先させてもらいた
いのです」。
有明病院でも腸内フローラの検査が始まっているとの報道
を見た。

入院中、同室だったふたりの女性は、ガンで太ももから切
断の手術を受けていた。ふたりとも、ひどい便秘に悩んで
いたことを聞いた。これでは自身の免疫だって活動できな
いのではないだろうか。

腫瘍の治療法が確実に変化しつつある模様。免疫力を駆使
しての治療があるといい。
こんな質問と要望を手紙に書いて投函した。

次の再診の折に、主治医はやまねこの手紙を胸ポケットか
ら取り出して、考えながらポツリポツリ語った。

こり:やまねこの要望が通ったの?

その通り。結局、この時のやり取りがその後の治療の出発
点になった。薬物療法は手術のためではなく、薬物Dによっ
て腫瘍が縮小消失する可能性を期待し経過を観察するとの
方向が定まった。

「先生は外科医師で手術してなんぼの世界におられるから、
本当はメスを握りたいとお思いでしょう!」

「ええ、その通りです。しかしこれからは手術でない方向
に変わってくでしょうね」
かすかに寂しそうな表情が見えた。

薬物Dがどれほど効果を発揮するのか前例はない。外科医の
間で、手術の時期をコントロールするとの申し合わせがで
きていたかもしれない。けれど、やまねこの年齢での症例
は他に例がない。早く患部の老化が進めばいいとのホンネ
がこれまでも語られていた。

こり:やまねこは「若く」て困ってるんだ!

そうなの。A先生が言うのよ。

「はやく普通のバアチャンになってよ!」。
「バアチャンか~!」

ムカッとしたけれど、苦笑がこみ上げ腹を抱えての大笑い。
看護師さんたちも笑い転げてた。

▲今回の検査と再診のとき、MRI,骨シンチの映像で、腫瘍が
残っているのが見えた。膝の関節のすぐ下である。

A先生は告げた。
「普通なら、これは人工関節にする状態です。だけど以前と
比較して縮小してるから、Dの効果があったとみなし、今後
Dの使用を継続し、少しづつ期間を伸ばしてさらに縮小す
る経過を観察しましょう。やがて骨粗鬆症の治療と変わらな
くなりますよ」。

こんな結論だったのです。目下、この経過を観察する最中な
のです。

こり:やまねこは細かに書いてきたけど、結局、何を言いた
   いのよ?

簡単に言えば、「身体は自分のもの。治療するしないは、自分
が選ぶ」。このことがある程度実現できたと思うの

癌研有明病院での骨腫瘍の治療方針が転換したことが助けにな
った。
40代後半の主治医A先生は、外科医として有能であるばかりで
なく、幸い患者の話にしっかり耳を傾け、向き合ってくれる
師でもあったの。このことに感謝してるんだ。

「結局、ふじせさんが言った通りになってますよ」。
A先生は述解しました。

▲身体は自分のものなんだ。やがて身体が終りを迎える時、ど
のような終わりにしたいのか、選ぶことが許されるのであれば、
尊厳死を選びたい。

左膝の腫瘍、骨巨細胞腫は、身体の限界、言いかえればいのち
の限界をやまねこに絶えず知らせてくれるメメント・モリなの
です。

最後に。
これから気をつけねばならないこと。骨の中に腫瘍があるから、
転んだりして骨折しないようにしなくては。万一骨折すると複
雑骨折になって回復が難しくなる。

こり:このまえ、まだ凍ってる坂道で夕方の薄暗い時に、転んで
   膝を打ったでしょ。

そうなのよ。言わないでおこうと思ったけど・・・気をつけな
くてはね・・・


こりでした。
うらおもて・やまねこでした。


2 件のコメント:

  1. どうかくれぐれもご無理されませぬように。
    ところで今、夜7時のNHKニュースをラジオで聴いておりましたが、私の頭にカチンと来たアベソーリのこの言葉「圧倒的第一党」しかも『アツ』の部分に力を込めておっしゃっていましたね。カチンカチン来ました。このニュースですhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20170501/k10010968201000.html?utm_int=news_contents_news-main_003

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  2. やよいさま。
    ご心配、ありがとう。もともとナマケモノだから無理はしないのですが、面白いと突っ走るところがあります。首相が「アツ」のところに力を込めてね・・・
    弱いものをたたくのが大好き。自分が散々弱いものだったから。

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