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2011年7月21日木曜日

世界一でもエコノミークラス、「なでしこ」の意味すること


@@@@やまねこ通信114@@@@

女子サッカー「なでしこジャパン」がW杯でアメリカを下し優勝し
た。テレビにもスタジオ出演、新聞の一面トップ記事、大事件の扱
いである。「日本国」全体が沸き立ち、国民栄誉賞を与えようとの期待も
高まっている。

それに対する協会の報酬は優勝ボーナス150万円を倍増し300
万円にすること、記念品を贈るということであると伝えられている。
けれどたったこれだけの報酬で報われるのだろうか。

19日成田に帰国した選手たちは疲れ切った表情だった。彼女たちはド
イツ日本の帰国便はゆっくり休めるビジネスクラスを希望したが、
日本サッカー協会の決定はエコノミークラスだった。

交通費の序列ある日本サッカー協会。ここから見えてくるものは小
さくないとやまねこは思う。

規定では役員と日本男子代表の監督がファーストクラス、選手全員は
ビジネスクラスで移動することになっている。黒字出しているのは男
子サッカー部門であり、女子は不採算だから当然との声まである。

しかしこの考えからすると、一つの企業の中で不採算部門の社員は経
費も安くあげるという発想につながるのではないだろうか。こんな会
社があったら、同部門は必要な予算も与えられず、士気が低下し一層
の赤字化を逃れられないだろう。それよりも、同部門が不採算で経費
投ずるに値せず、将来性の見込めない部門であるなら、どうして整
しないのか、経営責任が問われるだろう。

今度の「なでしこジャパン」はワールドカップであれ、オリンピック
であれ、男子チームが一度も達成したことのない世界一を初めて実現
した。彼女たちの勝利は収益をどれだけ稼いだかという日常的企業会
計の数字で計るような次元をはるかに超えている。

「なでしこジャパン」は自分たちが価値ある「商品」になることで、
男子中心の日本サッカーリーグの商品価値を、国際的にアップグレー
ドさせ、その地位を飛躍的に高めた。日本サッカーリーグは今後、あ
らゆる場面で女子サッカー優勝の恩恵を受け、同時にその価値をアピ
ールしてゆくだろう。交通費を少し弾む弾まないという問題とは別次
元の問題だろうとやまねこは思う。

スポーツ選手の移動手段はコンディション作りに重要である。決勝戦
が終わったからもういいということはないだろう。日本サッカーリー
グは監督がファーストクラスと決まっている。果たして「なでしこジ
ャパン」の監督も、一人ファーストクラスに乗ったのだろうか。

移動手段の序列の目的はいったい何であろう。組織内の決定権は誰が
握っているかの権威を示すことではないだろうか。だとしたら日本サ
ッカーリーグも一般企業と同じではないか。

男子選手はたとえ控え選手であっても、全員をビジネスクラスで「運
搬」するところに、選手が重要な商品だとの認識が示されてはいる。
だとしたら、「なでしこジャパン」のWカップ優勝という緊急事態に
対して、機敏な判断が下されなかったのではないか。どの役員がこう
した決定の責任者なのだろう。
これを見ると、プロ野球リーグに比較して新しい組織、日本サッカー
リーグも、慣例墨守の日本型組織の例外ではなかったということであ
ろう。

今回のWカップ優勝以後の注目の的は、女子サッカーリーグが国内で
発足し選手たちが生活維持のアルバイトから解放されることであろう。
INAC所属の澤穂希選手らはサッカー一筋の生活を許されているそうだが。

今後女子サッカーの採算、不採算をリサーチするのは経営者、日本サ
ッカーリーグの仕事である。この組織が将来に向けてどれほど高感度
高品質の組織であるかは、残念ながら、今回のエコノミークラス決定
ある程度示されたとやまねこは考える。

ところで「なでしこジャパン」という名前が気になるのはやまねこだ
けではないらしい。はらふさこさんもメールに書いている。いまごろ、
日本の女子を「なでしこ」なんかで象徴するのかなあ。

野球の世界大会のチームは前回「サムライジャパン」とのネーミング
だった。「なでしこジャパン」も公募の結果決まったという。

中国のメディア新民網は「なでしこ」という愛称の語源である「大和
撫子(やまとなでしこ)」が「外面は柔和で内心は忍耐強く、高尚な
品を身に付けた女性のこと」を指すと紹介した。解説者は「本当にう
らやましい」とコメントして強い女子サッカーに羨望(せんぼう)の
まなざしが向けられているという。

「外面は柔和で内心は忍耐強く、高尚な品を身に付ける」という美徳
が、日本では女性に対してだけ向けられていたことについては、批評
眼は向けられていない。

「スポーツしてもいい。でも内面は柔和で品を失なっちゃだめだよ」
。どこまでも女性にたいして注文が厳しい男性中心社会の根強さが、
女子スポーツに対して向けた集合的意識がこんなことなんだろうな、
とやまねこは思う。

話は変わるが、「親切人のためならず」という諺は、もともと、他人
に親切にすれば、やがては自分に返ってくる。だから親切はけっして、
他人のためじゃない。自分のためなんだよという意味だった。

けれど今日の多くの人々の理解は違うらしい。
他人に親切にすると相手の努力の機会を奪い、ひいては自立の機会を
奪ってしまうから、結局その人のためにならない。安易に人に親切に
するもんじゃない。「自己責任」の発想である。

諺の意味するところが時代によって変わってゆく一例である。一方、
一つの花にも様々な意味がある。

「なでしこ」という花が、今後、「男たちの罵りにも負けず勝利を
もたらした強さと勇気を兼ね備えた女たち」という「なでしこジャ
パン」の実態を意味内容として強力に神話化して指示し続けるとし
よう。

そうすれば、「なでしこ」という花のシンボルに新しい意味内容が
加わって、「外面は柔和で内心は忍耐強く」という伝統的意味内容
の上に塗り重ねられてゆく可能性が大いにあるだろう。

「なでしこ」という花の象徴に新しい意味が加えられ、やがて変化
する。こうやまねこは考えている。

長野日報の719日(火)の一面コラムは語っている。「なでしこ
ジャパン」には海外で活躍する選手も少なくない。男子の選手が請
われて移籍するのと違い、女子選手は自ら飛び出していく選手が多
いという。これは国内で十分な活動の場がないことの裏返しだろう」。
これははたしてスポーツの世界だけの出来事であろうか。

女子サッカー世界一がメディアを狂乱させる一方で、世界134カ国中、
日本は94位というめでたくないニュースは常に新聞外信欄のベタ記
事にしか出て来ない。

世界経済フォーラムが発表する社会の男女差別の指標である「ジェ
ンダーギャップ指数」は、2010年、日本は94位であった。経済的に
豊かな国々で日本と同じ序列にあるのは、イスラム圏アラブの産油
国の国々である。

この不名誉な数字を、はたしてこの国のどれだけの人々が心にとめ
ているだろう?

うらおもて・やまねこでした。

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