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2012年6月17日日曜日

魚津に行ったら魚を食べなくては、寿司屋で女同士の会話がはずんだ


@@@@やまねこ通信201@@@@

魚津滞在中、連日寿司屋に通った。目当てがあったわけで
はない。誰に聞いても、何で探しても、魚津はどこの寿司
屋もうまくて、回転ずしも同じであることが評判である。

宿泊したビジネスホテルのフロントに訊いて、そこから徒
5分ほどの回転寿司に出かけた。「おすしやさん鮮魚亭」。
店名も、店の構えもぱっとしない。中に入ると家族連れが
何組か食事中である。

回転ずし屋だけれど、どのお客も自分の好みを板前さんに
注文している。やまねこもいつもこのように注文する。

若い板前さんが一人で包丁を握っている。店の壁のホワイ
トボードには、本日お勧めの品書きが載っている。

漁港の町なのだから、海で取れた小魚を食べたい。こうや
まねこは思っていた。

品書きを見ると、期待通りのネタが並んでいるではないか!
やまねこは心の中で「しめた!」と叫んだ。

いわし、あじ、しめさば、黒鯛、真鯛、赤貝、うに。これ
らは、東京でも信州でも食べられるネタである。鮮魚亭で
は、どれも新しくて美味しい上に安い。

ばい貝、白えび、ふくらぎ、めじな、かわはぎ、あおりい
か。これは富山でなくてはお目に掛かれないネタである。

地えび、とびうおは、富山でもなかなか口に入らない。と
りわけほうぼうの寿司は今回初めて味わった。

板前さんの話では、まぐろ、かつおは、魚津では売れない
という。そうだろうなあ。こんなに新鮮な小魚が毎日豊富
に水揚げされるのに、冷凍車で高速道路を長距離走って運
搬された魚のすしを、誰が好き好んで食べるだろう?子ど
もが時折、注文するばかりという。

ランチタイムには、魚のアラの汁物が付いてくる。その日
は黒鯛のアラだった。白身魚だけれど濃厚な味。

この日は、隣で女性が一人、ビールを傾けていた。
ゆっくりくつろいだ表情である。
のぶこさん、と仮に呼ぶことにしよう。

のぶこさんは、やまねこに向って「奥さん」と呼びかけて
くる。
「奥さんじゃありませんよ」と返事する。
「だって、どう呼んだらいいのよ?」
「おかみさんとか後家さんとか、他にあるでしょう」
「だって40過ぎた女の人は、ここでは、みんな奥さんと
ぶよ」

のぶこさんは、執拗に主張する。
「ああそうなの。魚津ではそうなのか」
やまねこは地域基準に従うことにした。
板前さんが、女二人の漫才を聞いて笑っている。

「ゆうべ、ウニを頼んだら売り切れだったの。だから今日は
最初に注文しなくては。好きなものは最初に食べたらいい
のよ」
「面白いねえ」
「だって、次の瞬間に何が起こるか分からないから」
「嫌なこと言うね」

話を始めるとのぶこさんはやまねこより一歳年上であるこ
とが分かった。
魚津市立大町小学校に学んだ祖母のことを調べに信州から
やって来たことをやまねこが伝える。

「あら、私、大町小学校に通ったよ。お墓が前にあるでしょ」
のぶこさんが昔の学校風景を語ってくれる。城跡のお墓は
今でもあるようだ。
「西部中学校のところには、女学校があったんだよ。私の母
が通ったの」
のぶこさんは眼を細める。

「大町小から西部中に行って、それからYKKに働きにで
の」
「まだ吉田チャックって言ってなかった?」
「工場で働いたんだよ。これくらいの長さの細長い機械に
ャックの材料を入れて熱くするんだ」
のぶこさんは、寿司屋のカウンターの奥を指さした。約2メー
トルの長さである。

「機械をいくつ受け持つの?」
「二つだよ」
温度が高すぎるとチャックの材料が融けてぐちゃぐちゃにな
って、臭いがするんだよ。だから熱すぎないようにスイッチ
を切らなくちゃならないんだ」

「ずっと同じ仕事だったの?」
「そうだよ。そのうち、嫌になって辞めたんだ。若い子たち
が入ってきてね。べちゃくちゃお喋りばかりしてるから温度
が上がって、材料が融けてしまうのに平気なんだよ」
「のぶこさん、教えてあげたの?」
「言ったって聞かないんだよ」
「そうなのか。逆に嫌われるかもしれないね」
「そうだよ」

「のぶこさんみたいに、しっかり働く女たちを、主任にした
らよかったのよ。そうしたら、若い子たちも主任の指示には
従わなくてはいけないでしょ。
同じ資格の先輩だったら、無視しても良いからね。
今は知らないけど、その当時のYKKは女子従業員の使い道
を誤ったんだね。能力ある方が辞めてゆくようではね」

女性週刊誌で語られる「お局さん」問題は、男性と違って女
性が企業で昇格しないことが根底にあるとやまねこは常々考
えている。熟練労働者と未熟練が同じ立場だったら、「お局
さん」と祭り上げて陰で嗤っていればよいのだから。

板前さんが笑って聞いている。
「でも、仕事できない子たちは別の部門に移されたよ。毎日
バスで通ったんだ」
「何交代だった?」
「早番は5時から午後1時まで。遅番は1時から夜10時まで。
深夜は機械が止まるんだ」
「それだったらバス送迎は有難いよね。安全だし。その当時
バスの送迎は珍しかったでしょ」
「そうだよ」

のぶこさんは、ゆっくりビールを傾ける。
「また、ここで会いましょうね」
やまねこは程よい加減のお昼を終えて立ち上がり、勘定を支
払った。1400円だった。前日、前々日の晩に支払った勘定の
半額ほどである。この位にしておけばよかったと窮屈になっ
たウェストを触りながら反省した。

魚津に行ったらユニクロ付近の「おすしやさん鮮魚亭」がお
勧めですよ。でも、食べ過ぎないようにね。


うらおもて・やまねこでした。


追伸:
富山出身のかずこさんが、回転ずしについて、即座にメール
を送ってくれました。

魚津は行ってませんが、富山の回転寿司は本当に安くて、新
鮮で、おいしくて、わざわざ高い寿司屋へ行かなくても大満
足。エビの鬼がらのみそ汁などはおかわり自由。
なんと素晴らしいことでしょう。
ついでに、生地の道の駅のお魚は本当に新鮮で、もう感激、
でした。 また食べにいきたーい。  おやすみなさい。

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