@@@@やまねこ通信146号@@@@
塩尻までちょっとした遠足気分。茅野市役所前を朝8時半
出発したバスの中には顔見知りの方々が多い。今日は年一
度開催の長野県男女共同参画フェスティヴァル2011年であ
った。
●男女共同参画は基本法が制定され計画も策定、進行中で
ある。今、必要なのは実践である。この認識を出発点にし
て、パネルディスカッション「ともにつくる地域づくり」
では、目覚ましい地域の実践例が発表された。
パネリスト、平島安人さん(NPO法人森倶楽部)、丸山
典子さん(塩尻東公民館きらめき教室受講生)、吉村幸代
さん(松本市寿台公民館館長)
コーディネーター、古田睦美さん(長野大学観光ツーリズ
ム学部教授)、アドバイザー、加藤さゆりさん(長野県副
知事)
古田睦美さんは、長野大学が地域密着型の大学で、地域貢
献度が県下一であると紹介。男女共同参画は基本法が制定
され計画も策定されている。今、必要なのは実践と考えて
有言実行する社会学の先生。男女共同参画の地域つくりを
めざし、NPO「食まちネット」を立ち上げ、農家と地域
の交流、ファーマーズマーケット、エリア内フェアトレー
ド、毎日の旬の食卓、食+農からプチ起業を作るなど、地
域の人々の力を結集する要の地点に古田さんと大学が重要
な役割を果たしていることを紹介した。
安島安人さんは25年前、チェルノブイリ事故の折、長男
が一歳だった。それ以後、環境問題、ダイオキシン、温暖
化の問題に取り組み、現在は新エネルギー信州ネットの理
事である。
丸山典子さんは、公民館活動の参加者は女性ばかりなのに、
その運営者が男性ばかりだったことに不審を抱き、女たち
の力を導入した経験を語った。どの地域にも応用できそう
である。
吉村幸代さんは地域初の女性公民館館長として、少子高齢
化しつつある松本市郊外団地、寿台で地域おこしを始めた。
利き酒の会を開いて参加者を増やし、やがて清酒「寿一番
星」の製造に。また和太鼓のチームを作って地域の祭りの
求心力を作った。人々を酒と祭り太鼓で結集したというの
は目からうろこの知恵だと思った。
●加藤ゆかり副知事は重要な発言をした。副知事が女性に
なったら男女共同参画が県内で進むことが期待できるほど
に、現実は甘くない。県庁には、県内各地からさまざまな
提案が持ち上げられているが、その中に共同参画の傾向の
提案がほとんど見当たらない。
今後は、県が何をしてくれるのかを待つのではなく、県内
の活動メンバーが、さまざまな施策を県に持ち上げ提案す
るように。こうした発言だった。
やまねこは米国ケネディー大統領の就任演説を思い出した。
「アメリカがあなたに何をしてくれるかと望むのではなく、
あなたがアメリカに何ができるかを考えよう」。
加藤副知事はおそらく、手元に大量に寄せられる男女共同
参画実現の限りない期待のボールを、県民に投げ返したの
だ。頭が良く、内面が強い人だと思った。けれど肝心のこ
とが語られなかったと思った。
質問時間にやまねこは聞いてみたかった。県政に対し、男
女共同参画施策を提案する窓口は、今後新設されるのだろ
うか。それとも県議などを通じての議会プロセスを辿るの
だろうか。後者の道であれば、意識高い県議を選挙で当選
させるところから始めねばならない。どうみても4年以上
かかるだろう。
●塩尻フェスティバルに参加して、男女共同参画の今日的
段階が分かって大いに得るものがあった。実践活動は本日
のところ、地域活動、地域おこし、農業と食生活にまつわ
ることが中心だった。
こうした方面だったらやまねこの地域にも見つかるだろう。
けれど女たちの仕事が、男たちの名前で広報宣伝されてい
るのではないか。このようなケースが、やまねこの頭に幾
つか思い浮かぶ。
重要な問題がここにある。女性たちの実践活動だけが存在
しても男女共同参画にはならないということだ。昔から女
たちは家で地域で主な活動の担い手であった。何が違うの
か。実践活動と同時に、活動を女たちの名義にするという
男女行動参画の意識の方向付けが不可欠なのである。女た
ちにその選択をする決意が必要なのである。
午後には弁護士菊池幸夫さんが、落語家も顔負けの講演で、
離婚、DVなどについて語った。そうか、そうか、家族が
法律や弁護士を必要とするのは、何らかの望まない事柄が
出来した時である。この暗い話題を軽いのりで展開したの
があの話芸であったのか。
塩尻フェスティヴァルにはすごいアトラクションがついて
いた。塩尻志学館高校の吹奏楽部演奏である。共学の女子
と男子の高校生が創意工夫に満ちた音楽演奏と、男女共同
参画への応援エールを見せてくれた。この高校生たちが社
会人になるころには、少しでもジェンダーによる活動の制
限が消滅する方向に社会が進んでいることを、やまねこ心
底願っている。
●素晴らしい企画と塩尻市の女性団体の綿密な協力からな
って成功を収めた今年のフェスティバル。けれど、最後に
注文を出さねばならない。
冒頭の来賓あいさつである。県会議員が男性ばかり3人並
んだ。一人は議長の代理でありきたりの挨拶を読んだ。こ
の男性議員たちが、どんな男女共同参画の施策にこれまで
かかわりをもち、それらを実現させてきたのか、実現に反
対してきたのかそれが知りたいと思った。そもそも政治的
ヴィジョンを明確にしない議員たちも並んでいた。
議員の仕事は県議会での活動であり発言の場は保障されて
いる。お祭りの挨拶で名前を売って選挙活動に備える前に、
しっかり男女共同参画の政策勉強をしてほしいものである。
次回から、来賓あいさつというこんな無駄な時間つぶしは
止めにしたらどうだろう!
うらおもて・やまねこでした。
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