@@@@やまねこ通信215号@@@@
「倫敦五輪では女子選手の活躍が目覚ましかったことが印象に
残りました」。
NHKニュース9の井上キャスターが語った。やまねこの友人、多
摩市のかずこさんもメールで「日本勢について言うと、女子が圧
倒的に頑張ったようですね。男子サッカーは、女子に及びません
でした。これを彼らおよび関係者はどう考えるのでしょうね」と書い
ている。
●毎日新聞は「五輪と女子選手―配慮ある強化支援を」との社説
(8月14日)。概略を紹介しよう。
日本が38個のメダルを獲得。国別金メダル数ランキングが10位。
目標は「世界5位以上」だった。だが総メダル数は史上最多、世界
ランキング6位だった。
メダルラッシュの背景に文科省のナショナル競技力プロジェクトが
あり、過去最多の32億円をつけた。強化の軸は、メダル獲得有望
競技を重点支援するマルチサポート事業。
4年後の五輪に向け、強化費増額を求める声が予測される。けれど、
歳出削減の中、五輪メダルのためにどこまで税金投入が許されるの
か?「5位以上」との目標を達成して、その先どうするのか?メダルに
よって、国民の身近なスポーツ環境がどう変わるのか?こうした議論
が必要との提案をする。
次に、女子選手の問題。
今大会は26競技すべてで初めて女子種目が実施され、日本選手団は
女子が男子を上回った。メダル38個の内訳は男子21個、女子17個。
けれど、かかわった選手の人数でみると、延べ84人のうち、サッカーや
バレーボールでメダルを獲得した女子が53人と圧倒的。
女子の強化がメダル獲得の近道として、国は昨年度、戦略的に女子を
強化、支援するプロジェクトを発足させた。
毎日社説は最後に、女子アスリートの「三徴」を紹介、警告する。体操、
陸上長距離など、体重制限ある競技で、「摂食障害、無月経、骨粗鬆
症」が頻発するという。メダルのために男子並みの練習に追い立てられ
る女子選手から眼をそらすわけにはいかない。女性スポーツの歴史は
浅く、未知の領域が多いと産婦人科医は語る。
●へえ、そうだったの!女子にテコ入れすることがメダル獲得の近道っ
て、国・文科省は気づいてたんだ!
やるじゃん、やるじゃん!
しっかり成果を出したよね。
逆差別なんて、だれにも言わせなかったじゃん!
国・文科省のみなさん、あんたら、やればできるじゃん!
けれど、せっかく気づいたのだったら、スポーツに限らず、あらゆる方面
に応用してよね!
こうやまねこは思った。
メダル獲得のための強化費「過去最多の32億円」!
けれど戦争代わりの「国威発揚」の機会である五輪でのメダル獲得の
道具として、選手を使い捨てにするんでないよ!
こうしたメッセージを毎日社説は発信している。
●ところで、五輪でメダルを取ることにどんな意義があり、人々の暮らし
とどうかかわるのだろう?とりわけ、女子選手の金メダルが、社会の男
女平等にどのように役立つのだろう?
このようなことを、いち早く考えている国がある。世界の注目を浴びる国
フィンランドである。
フィンランドは人口500万人程度で兵庫県よりやや少なめ。
2004 年度のOECD のPISA 学習到達度調査において学力世界一。
世界経済フォーラムが発表した「2006-2007 年世界競争力指標
(GCI)」で2 年連続2 位。経済的にも競争力も目覚ましい。
他の北欧諸国とともに高福祉、男女平等の施策がゆきわたり、
現大統領は女性。女性の国会議員比率が37%で世界3 位、GEM
(ジェンダー・エンパワーメント指数)においても世界6 位
(2006 年)。
国連の女性差別撤廃条約を批准したのは日本の1 年後、1986
年だった。ところが、日本の「共同参画基本法」よりも12
年早く、男女平等法が1987 年成立した。
現在、女性大統領、20 名の閣僚中女性が12 名を占め、促進
の度合いが非常に速い。
スポーツに関しては、国土の多くが針葉樹地帯のためスキー
が盛ん。1912 年の五輪ストックホルム大会で金メダル9 個。
1952 年にヘルシンキ大会を開催した。
しかしオリンピックでの活躍はトップスポーツ優先ではない
かとの反省が生まれ、国民の健康作りをめざしたスポーツの
方向が探られ、やがて、生活の中にスポーツやアウトドアラ
イフを根づかせた「フィットネスの国、フィンランド」と呼
ばれるようになり、生涯スポーツ先進国となった。
論文「フィンランドスポーツ連盟の活動を中心に」は、
1)フィンランドのスポーツ政策、
2)フィンランドのジェンダー平等政策、
3)フィンランドに大きな影響を与えているヨーロッパ諸国の
政策、の3 つの観点での研究である。
こんなすごい国があるんだ!
ジェンダー平等政策は、先進的フィンランドを、参考にしたらいい!
やまねこはわくわくする思いである。
●以下引用:
1)について、最大のNGO
組織であるフィンランドスポーツ連
盟(FSF)の活動を中心に検討すると、女性たちの国内ネット
ワークが組織され、文化省との協力関係のもとに女性の地位を
検証し、地位改善のための諸政策(組織に女性を多用すること
への奨励賞、指導者のためのプログラム、地域の平等プログラ
ム、国庫補助金のための基準としてのジェンダー平等など)を
提案、実行している。
その結果、1993 年、FSF 設立当時では12%であった女性理事が、
2005 年には47%を占めるに至っている。
2)について、ジェンダー平等促進に関しては社会保健省が主
たる管轄となっているが、他の省との連携も強い。社会保健省
では、ジェンダー平等課、平等のための行政監察委員会、ジェ
ンダー平等評議会、平等審議会の4 組織にて構成されている。
国連の女性差別撤廃条約を批准したのは日本の1 年後、1986
年であるが、男女平等法が1987 年に成立し、現在、女性大統
領、20 名の閣僚中女性が12 名を占めるなど、促進の度合いは
著しく速い。
3)について、体育・スポーツの実施は基本的権利であると謳っ
たユネスコ憲章(1978 年)、あらゆる場へのジェンダーの主
流化(1990 年代)、第1 回世界女性スポーツ会議におけるブ
ライトン宣言(1994 年)、ヨーロッパ女性スポーツ会議の議
長国(1998-2000 年)となったことなどが大きな影響をもたら
したと考えられる。
これらは、地理、経済、文化、言語などヨーロッパ諸国の緊密
性から生じたものであり、日本とは異なるフィンランドの特殊
性であるとも考えられる。
しかしながら、そうしたスポーツ政策に一貫して認められるの
は、女性に対してもスポーツへの平等な機会を保証しようとす
る強い意志であり、それは、ブライトン宣言を受けて直ちにそ
の精神を実現すべく教育大臣がスパイク委員会を設ける対応の
速さにも示されている。そうした政策を支える国民の支持も大
きく、国民の5 分の1がクラブに所属して何らかのスポーツ活
動を行い、10 分の1 がスポーツや体育活動のボランティアに
従事しているような背景に支えられている。
国民に広く根づいたスポーツと力強く推進されているジェンダ
ー平等がうまく連動しているフィンランドのスポーツ状況は当
学会にとって一つの理想的なモデルであり、それを可能にした
思想や実践、特に女性スポーツ政策に関してはもっと注目され
研究されるに値する。
以上は「日本スポーツとジェンダー学会2008年」の発表
「フィンランドスポーツ連盟の活動を中心に」発表者:吉川康
夫、飯田貴子(帝塚山学院大学)からの引用でした。
全文は次のURLをクリックしてください。
http://www.jssgs.org/old-hp/Events/Congress/6thconfe/abstract/yoshikawa.pdf
うらおもて・やまねこでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿