@@@@やまねこ通信243号@@@@
ノーベル賞授賞式は、創設者アルフレド・ノーベルの命日
である十日夕(日本時間十一日未明)、ストックホルム市
内のコンサートホールで開かれた。
山中伸哉さんは、妻知佳さんと81歳の母美奈子さんを同行
してストックホルム入り。家族は、娘2人である。
家族もさることながら、山中さんの周辺には、女性研究者
が多い。
「この成功は私だけのものではなく、三人の若い科学者、
高橋和利君、徳沢佳美さん、一阪朋子さんの努力なしには
成し遂げられませんでした。また、iPS細胞に至る三つ
の道筋をつくった科学者たちにも感謝したいと思います」
と語る山中氏。
共同研究者である若い高橋和利さん、徳沢佳美さん、一阪
朋子さんを同行した。うち二人は女性である。
山中さんが所長を務める京大の研究所には、女性研究者が
少なくない。山中さんは多数の女性研究者を育てている。
生物学は女子の多い分野でもある。
●山中教授のノーベル賞授賞スピーチが、評判である。
「自然そのものが師であり、時に予想しなかったことを教
えてくれた」との結論。
その冒頭、こんな出来事を語った。
医学生理学賞発表前日の10月7日のこと、京都での国際
学会に、同賞選考にあたるカロリンスカ研究所のワルベリ
ーヘンリクソン所長が出席した。
その折、山中さんは、所長が「私にウインクしたような気
がした」と明かした。
「そのときは本当にウインクしたか自信がなかったが、今
は確信している」
この話を聞いて、万場が笑いの渦だった模様。
●研究所長が山中氏にウインクしたとの話に万場が笑い転
げた。カロリンスカ研究所所長が女性であったことをはっ
きり示さないことには、おかしさが伝わらないだろうに!
いくつもの新聞のウエブ紙面をネット検索してみたが、ワ
ルベリーヘンリクソン所長が女性であることに注目した記
事はひとつも見当たらない。
●カロリンスカ研究所のワルベリーヘンリクソン所長はフ
ルネームが、ハリエット・ワルベルイ-ヘンリクソン
(Harriet Wallberg-Henriksson)。
カロリンスカ研究所はスェーデンの最大の医科大学。ノー
ベル医学生理学賞受賞者を選考する機関である模様。
カロリンスカ研究所のウェブページをやまねこは訪問した。
さすが、ジェンダー平等において世界1、2を争うスウェ
ーデンだけある。
研究所の理事会は定数20名、男女の割合が10人、10人。
学生代表、職員代表も理事会に参加している。
カロリンスカ研究所の所長、すなわちスェーデン最大の医
科大学の学長が女性なのである。
東大の医学部長や学長、東京医科歯科大学長が女性である
と同じである。
山中さんのノーベル賞授賞をきっかけに垣間見えるスウェ
ーデン、ジェンダー平等社会の進み方!
日本のメディアは、もっと驚いていいのにねえ!
驚かなくては!
どうして驚かないの?
どうして驚かないの?
メディアが驚かないことに、やまねこは驚く!
見えないふりして通り過ぎようとしている。
このように、驚くべきところに驚かないメディアの、アン
テナを寝かした体質が、この国のジェンダー不平等を温存
する大きな要因である。
結果、山中さんの授賞式は、日本社会では、次のように報
道される。
●「ノーベル賞:山中さん授賞式 正装の夫「かっこいい」
和服の妻、寄り添い
毎日新聞 2012年12月11日 東京朝刊
【ストックホルム須田桃子】日本人として25年ぶりにノ
ーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授(5
0)は10日午後(日本時間同日夜)、宿泊先のグランド
ホテルで身支度を整えた。山中さんはえんび服の正装で、
妻知佳さん(50)は山中さんが選んだというおしどり柄
の淡いピンク色の和服姿。山中さんは「家内はよく着物を
着る機会があるので、いつも通り似合っている」と照れく
さそうに語った。知佳さんは山中さんのえんび服姿に「か
っこいいです」と応えた。
知佳さんは、山中さんと中、高時代の同級生で皮膚科医。
山中さんが93年に米国へ留学した際は、自分の仕事を中
断し、幼い娘2人を連れて同行するなど、研究者として歩
む夫を支えてきた」。
●親愛なるやまねこ通信読者のみなさん!
この記事に、「良妻賢母」神話が集約されているのです!
「良妻賢母」神話、すなわち、女たるものは、すべてを投
げ打って、夫を支え、家庭を支え、子育てに専念するのが
あるべき姿。これこそ、戦前の女子教育の目標であり、戦
後も生き延びて、女だけに向けられた「道徳」です。
妻の知佳さんは、山中さんと高校同期生だから同年である。
夫の山中さんがキャリアを追求する時期には、皮膚科医で
ある妻の知佳だって、同じ時期に差し掛かっていただろう。
ところが、「93年に米国へ留学した際は、自分の仕事を
中断し、幼い娘2人を連れて同行するなど、研究者として
歩む夫を支えてきた」ことを、この記事は、「美談」のよ
うに語っている。
女たちが積み上げたキャリアは、「家族を支える」との大
義名分のために、あっという間に手放さなければならない。
「旦那さん一人おいて、あなたは何をしてるよの!」
こうした有言無言の非難が、今でも女たちを襲っている。
だから女性研究者はなかなか増えない。
こうした話をあちこちで見聞きしているやまねことしては、
無条件でこの「美談」を受け入れるわけにはいかないこと
を、ここで強調しておきたい。
冠婚葬祭の折には、厳しい話をしないのが、この国の「美
風」である。けれど、ジェンダー不平等を、少しずつ改善
しても、ノーベル賞受賞の「慶事」で、すべてを水に流し、
元通りの女の役割への復帰を喜んでいるわけにはゆかない
のです。
総選挙後の社会は、自民「大勝利」のため、ジェンダー不
平等への逆戻りが約束され、「良妻賢母」神話を根におい
た考えが、大手を振ってまかり通るであろう。
●山中さんのノーベル賞受賞が明らかにしたこと。
それは、スウェーデン社会では、医科大学学長が女性であ
ったこと。
逆に、日本では、メディアがいまだに女性のキャリアより
「良妻賢母」が立派だよ、とそれとなく繰り返し、ジェン
ダー不平等を再生産している現場だったのです。
うらおもて・やまねこでした。
選挙関連のジェンダー平等政策については「ちの男女共生
ネット」ウェブページをご訪問くださいますよう、お願い
いたします。
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ネット」ウェブページをご訪問くださいますよう、お願い
いたします。
http://ameblo.jp/gender-equality-chino
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